日本でもカジノ法案が成立し、IR整備法によって日本のIR設置に向けた動きは強まっています。
一方で忘れてはならないのがギャンブル依存症に関する問題です。
日本には300万人を超えるギャンブル依存症の方がおり、IR整備法でどこまでケアができるのかは分かりにくいのが実情です。
日本のカジノ法案がギャンブル依存症を増加させることになるのかどうか、そのあたりを探っていきます。
日本のカジノ法案が出来る前のギャンブル依存症の人数
日本のカジノ法案、IR整備法が成立する前からギャンブル依存症は多いと言われてきましたが、どれだけいるのか、チェックします。
日本のギャンブル依存症の数はおよそ320万人
2017年、IR整備法が成立する前に、厚生労働省はギャンブル依存症に関する実態調査を行いました。
成人1万人を対象にしており、面接調査を行ったところ、ギャンブル依存症の疑いがある人は3.6%となりました。
これを国勢調査のデータに当てはめるとおよそ320万人になる計算です。
面接調査はランダムで行われた
今回の調査では全国300の地点で住民基本台帳からランダムに面接調査を行う人を選びだし、1万人を対象としました。
その結果、3.6%の成人がギャンブル依存症の疑いがある状態だったというわけです。
またこの1年でギャンブルを行い、ギャンブル依存症になった人は0.8%で、人口にすると70万人あたりです。
諸外国と比較しても突出して多い
ギャンブル依存症の人数は海外と比較しても多く、海外ではだいたい1%台で収まるようになっています。
その中で日本だけが3.6%と高い数値を誇ります。
違う調査方法で調べた時には4.8%、536万人がギャンブル依存症だったと言われていますが、面接調査ということもあり、こちらの方が実態に即した数字と言えるでしょう。
日本のカジノ法案にギャンブル依存症対策はどれだけ反映されているか
2018年にIR整備法が成立しましたが、時を同じくして「ギャンブル等依存症対策基本法」も成立されています。
カジノ法案そのものに反映されているわけではなく、別に基本法を整備した形です。
では、ギャンブル等依存症対策基本法とはどういうもので、どんな対策がとられているのかチェックします。
国と自治体、事業関係者の責務
ギャンブル等依存症対策基本法では、国と地方自治体、事業関係者それぞれに責務が与えられています。
国に関してはギャンブル依存症対策を策定し実施すること、地方自治体は国と連携してその地域の状況に即した対策を立てて実施すること、そして事業関係者は国や自治体が取り決めた対策に協力し、ギャンブル依存症の予防に配慮することが示されています。
要するに国と自治体がギャンブル依存症の対策を決めて、事業関係者はそれに協力して予防に備えることになります。
神奈川県のギャンブル依存症対策とは
横浜市がIR設置に向けての動きを見せる中で、神奈川県ではギャンブル依存症の対策について考えており、「神奈川県ギャンブル等依存症対策推進計画」というものを策定しています。
都道府県には推進計画の策定に向けた努力義務が課せられ、策定してからも3年ごとに検討をし続けることが求められており、この推進計画はその一環です。
ギャンブル依存症に関する相談支援や治療支援、予防教育や普及啓発のほか、ギャンブルの関係事業者へのヒアリングなどを通じ、ギャンブル依存症患者を減らす動きに取り組んでいます。
神奈川県の推進計画は2021年4月から計画期間が始まり、この3年間での教訓などを次の推進計画にブラッシュアップさせます。
結局目新しい対策はない
カジノ法案整備により、ギャンブル依存症に関する対策はどうしても立てなければいけない一方で、これまでにもギャンブル依存症対策はそれぞれの事業者が行ってきました。
ギャンブル依存症患者が多いパチンコパチスロも関係団体が対策に乗り出し、射幸心を煽らないようにしています。
これまでにやってきたことを、改めて声を大きくして叫んでいるような状態に等しく、ATM撤去などを除けば目新しい対策がないのが実情です。
日本のカジノ法案にギャンブル依存症の特徴は反映されている?
ギャンブル依存症はWHOが認めるちゃんとした病気です。
そもそもギャンブル依存症の特徴とはどのようなものなのか、ここではギャンブル依存症の実態に迫ります。
ギャンブル依存症の症状は1つだけ?
ギャンブル依存症の症状とはなにか、実は具体的に言えるギャンブル依存症の症状はたった1つであると言われています。
それはギャンブルをやりたいという衝動的な欲求です。賭け金が増える、途中でやめると落ち着かない、ギャンブルのことを思い浮かべるなどは、ギャンブルをやりたい衝動的な欲求に通じます。
もしギャンブル依存症の症状を治したいとすれば、いかに衝動的な欲求を止めるかにかかっており、これがなくならないことには、何も解決しません。
ギャンブル依存症の特徴とは何か
ギャンブル依存症の特徴ですが、まず衝動的な欲求に関する特徴として、ギャンブルでの負債を取り戻そうと使ってはいけないお金に手を出してまで行うのがあります。
誰かにお金を借りてまでギャンブルを行う、その日にギャンブルが行われていることを知って急いで賭けようとするなども該当します。
一方、ギャンブルをやりたいために嘘をつくのも特徴の1つであり、ギャンブルをしないと落ち着かない、気分が紛れないのもギャンブルへの依存的な特徴と言えます。
日本のカジノ法案はギャンブル依存症による悲劇を誘発する?
ギャンブル依存症になると、何がなんでもギャンブルがしたいという衝動に駆られます。
この衝動が周囲にどんな影響を与えるのか、今一度知っておく必要があります。
ギャンブル依存症患者のほとんどは借金を抱える
ギャンブル依存症の患者と家族らで構成される「ギャンブル依存症問題を考える会」では、様々な実態調査を行っています。
その中で、家族が患者の借金を肩代わりした割合は、8割以上もありました。
肩代わりした金額の合計が100万円を超えるケースがとても多く、中には1000万円以上になるケースもあります。
家族は何度も借金の肩代わりを余儀なくされる
肩代わりをした家族の中で、1回だけのケースがほとんどですが、中には肩代わりをしすぎて数えきれないというケースも10%ほど見られました。
1回だけ肩代わりをするにしてもその金額が100万円を超えるケースがあるため、患者本人だけでなく家族にまで金銭的な悪影響がもたらされます。
この背景には、患者本人の返済能力が乏しいことがあるため、家族を含めたケアが求められます。
日本のカジノ法案で、家庭の崩壊や事件が誘発されるか
日本でIR整備法が成立したことで、特定のエリアでIRが設置できるようになりましたが、これによってどんなことが起こりうるのか気になるところです。
ギャンブル依存症になってしまえば、ほとんどの家族は借金返済を余儀なくされ、患者に成り代わって弁済をすることになります。
1回だけでも相当なことですが、これが2回、3回となれば愛想を尽かすのが自然な流れです。
ギャンブル依存症への調査によれば、家庭不和や別居、離婚を経験したのは全体の6割で、言葉の暴力を経験したのは全体の4割と家庭の崩壊につながるものが目立ちます。
これに加え、犯罪は全体の1割以上、暴力は2割を超え、飲酒運転も2割近くの人がその経験があったと答えています。
つまり、ギャンブル依存症患者は、このまま放置してしまうと犯罪につながりやすい状態であり、重大な事件につながっても不思議ではありません。
日本のカジノ法案はギャンブル依存症の治療を考慮している?
そもそもギャンブル依存症の治療には、効果的な薬もなければ決定的な治療法がなく、完治までの道筋がつけにくい病気です。
その一方、自然に回復するケースもあり、ギャンブル依存症の治療はなかなか大変です。
また、ギャンブル依存症の患者の中で、4分の1にあたる人が別の依存症を抱えていることが指摘されています。
圧倒的に多いのがアルコール依存症で、アルコールがギャンブル依存症を誘発している可能性も出てきています。
特に問題なのは、複数の依存症を抱えると医療現場で受け入れてもらえにくく、民間の施設を頼らないといけなくなります。
その民間施設もまた同様の人たちを注意深く見なければならないため、なかなか治療が追いつきません。
日本のカジノ法案は支援団体への補助が手厚くない
日本のカジノ法案が成立する前、ギャンブル依存症問題を考える会は厚生労働省で記者会見を開いており、カジノ法案に対してダメ出しを行っています。
ギャンブル依存症対策が不十分であり、回復支援や予防教育についてほとんど言及されていないと主張しました。
カジノだけギャンブル依存症対策をするのではなく、公営ギャンブルやパチンコを含めた対策をしてほしいと考えています。
ギャンブル依存症問題を考える会の会長である田中紀子さんは、政府がギャンブル依存症対策に予算や人材を割く様子が全く見られないと語っています。
これが語られたのはIR整備法が成立する少し前であり、日本のカジノ法案がギャンブル依存症に真剣に取り組んでいる可能性が乏しいことを示唆します。
日本のカジノ法案に実際の患者や家族は何を思うか
ギャンブル依存症を巡り、ギャンブル依存症問題を考える会の会長である田中紀子さんが積極的にギャンブル依存症対策の強化をアピールするとともに、カジノ反対を訴えています。
田中紀子さん自身もギャンブル依存症だった経験があり、それを乗り越えて、ギャンブル依存症問題を考える会の会長を務めています。
田中紀子さんは、自助グループとつながっていて、お互いに励まし合い支え合ったことでやめられたことを明かしており、いかに相談の場が大切であるかを語ります。
そして、日本のカジノ法案に対して苦言を呈するだけでなく、アルコール依存を含めた対策の強化を求めています。
まとめ
日本のカジノ法案が、少なくともギャンブル依存症の抜本的な対策を考慮したものではないことは明らかであり、対策は不十分と言わざるを得ません。
カジノがギャンブル依存症のきっかけになっているケースは少ないですが、これは日本にカジノがないためで、誰でも通えるようになれば、カジノがきっかけになるケースは今後増えるでしょう。
田中紀子さんたちが行う自助グループへの相談、アルコール依存症などの治療、自殺対策などが求められます。
その支援が十分に行われている状況とは言い難く、日本のカジノ法案を整備する前に、もっとやるべきことがあるのが実情です。