2018年にIR整備法が成立したことで、IR設置に必要なカジノ法案はそのほとんどが成立した形です。

その一方で、IR設置を検討する自治体の中での争いが行われており、特に横浜ではIR設置反対に向けた署名運動が展開されるなど、事態は混沌としています。

住民投票の条例制定案を横浜市長や議会が反対し、民意を聞こうとしない姿勢も問題視されていますが、カジノ法案は横浜にとってデメリットが多いのか、そのあたりを探ります。

 

カジノ法案は横浜にとって本当にデメリットが多いのか

横浜では、市民団体を中心にカジノ法案に関する署名活動が展開されるなど、反対の声が強まっています。

しかし、カジノ法案は本当に横浜にとってデメリットが多いのか、デメリットとして想定されるものをご紹介します。

 

住民説明会で不安に感じた部分

横浜市の各地で展開された住民説明会では、林文子市長などが直接現地に赴いて質疑応答を行ったほか、コロナ禍で市長自ら動画内で説明する様子を流すなどしてきました。

この中で、参加者にアンケートが配られ、その中に「あなたや、家族・友⼈など⾝近な⼈たちにとって、IRはどのような部分に不安を感じますか」という設問がありました。

最大3つ〇をつけてもらう設問でしたが、市長が参加した12の説明会で回収されたアンケートのうち、2919の有効回答数の中で1000以上の回答数がついたものが3つあります。

1つは依存症の増加、もう1つは反社会的勢力の関与、最後に周辺地域の治安悪化です。後に動画での説明会が行われた6の説明会でのアンケートでも同じような結果が出ています。

横浜市民はこの3つの部分に強く不安を感じていることがわかりました。

 

カジノ法案はギャンブル依存症の増加につながる?

カジノ法案が成立し、実際にIRが設置されカジノが稼働することで、横浜市民が恐れているのが、ギャンブル依存症の増加です。

カジノにハマり、ギャンブル依存症の問題が出てくるのではないかと心配する声が少なくありません。

 

パチンコパチスロとカジノは同じカテゴリー

厚生労働省の調査では、成人の3.6%、国勢調査に当てはめると約320万人がギャンブル依存症の疑いがあるとされています。

そのうちの大多数がパチンコパチスロでギャンブル依存症になってことが明らかになっており、他の国とは違う傾向が見られます。

一見するとパチンコパチスロとカジノは関係ないように思われるかもしれません。

しかし、ギャンブル依存症をカテゴリー分けすると、実はパチンコパチスロとカジノは同じEGMの扱いとなります。

 

世界にあるEGMの半数以上が日本にある

そもそもEGMとは何かですが、これはエレクトロニクス・ギャンブリング・マシンの略で、カジノにおけるスロットが当てはまります。

カジノにおけるスロットは目押しなどを必要とせず、ただ回転させればOKのゲームです。

日本だと技術介入を必要とするなど、カジノのそれとは違う面がありますが、EGMという点では同じです。

世界に存在するEGMのうち、6割近くが日本にあるとされ、これがギャンブル依存症につなげているわけです。

いわば日本はEGM大国ですが、もしもカジノにスロットが置かれたとすれば、多くの人がこぞって遊ぶようになることは言うまでもありません。

 

カジノ法案で反社会的勢力の関与を防げる?

横浜市民がカジノ法案が制定される中で最も不安に思うこと、それは反社会的勢力の関与です。

なぜ横浜市民が反社会的勢力の関与をそこまで恐れるのか、そこにはある理由があります。

 

横浜は裏カジノが多い

バドミントン選手が裏カジノに興じてしまい、結果的に競技人生を棒に振る、もしくはオリンピックから遠のいた話がありました。

この裏カジノの収益は暴力団の資金源とされ、警察が摘発したかと思えば、また別の場所で営業をするという、いたちごっこ状態となっています。

横浜では毎年のように裏カジノの摘発に関するニュースが報じられており、元々カジノに対するイメージはあまり良くないのが言えます。

 

反社会的勢力排除の仕組みが決まっているかどうか

カジノ法案では、暴力団員がカジノに出入りをすることをはじめ、カジノ関連事業に反社会的勢力を介入させない規定が設けられています。

ただ一般の会社になりすましてカジノ関連事業に参入する可能性が考えられるため、明確なシステムが示されるまでは、反社会的勢力を完全に排除できるかどうかはわかりません。

また、カジノを設置したエリアに反社会的勢力が集まる可能性は否定できず、その結果、治安や環境の悪化につながってしまう恐れもあります。

 

カジノ法案成立で周辺地域の治安悪化につながる?

横浜市民がカジノ法案で恐れているのは、自分が住む地域の治安が悪化することです。

ラスベガスでは、カジノを守るためにセキュリティを強化するため、周辺地域の治安は保たれ、むしろ安全であるとも言われています。

 

パチンコ店と消費者金融のATMの数は犯罪件数に比例する?

パチンコ屋の数、そして、借金が普通にできる消費者金融のATMを足した数と犯罪件数に関連性があるという結果が示されています。

東京23区では、パチンコ屋と消費者金融のATMが少ない文京区や目黒区は犯罪件数も少なく、最も多いとされる新宿区は犯罪件数も多くなっています。

カジノが設置されれば、その周辺に消費者金融のATMないしは銀行のATMが設置される可能性が強まります。

その場合、傾向の通りであれば、周辺地域の治安が悪くなることが考えられます。周辺地域の治安悪化を避けるために、神奈川県警がどこまで力を入れるのかもポイントですが、どこまでを「周辺地域」とするのか、このあたりも判断が分かれるところです。

 

カジノ法案成立で、横浜が「韓国・カンウォンランド」になる可能性は?

カジノ法案成立で、IRが整備されれば税収は1000億円ほど増えて、財政が豊かになるという青写真を横浜市では描いています。

しかし、カジノを作れば作るほど周辺地域の経済が潤うほど、そんなに甘い話ではありません。

韓国ではカンウォンランドという失敗例があるからです。

 

韓国国民が唯一入れるカジノ

韓国にはいくつかカジノがありますが、実はそのほとんどは韓国国民の入場を規制し、外国人のみを受け入れています。

その中で唯一韓国国民が入場できるカジノがカンウォンランドです。

9,000ウォン、日本円で900円ほどを支払って入場できるほか、ギャンブル依存症を避けるために住民登録番号で規制を行い、1か月で入れる上限日数が定められています。

周辺には閉山した炭鉱があり、地域経済が冷え込むことが必至だったため、地域経済を守るためにカジノを導入しました。

 

社会問題が乱立するハメに

入場者のほぼ全員が韓国国民とされるカンウォンランドですが、2000年にカンウォンランドがオープンして以降、人口は15万人から3万人へ激減しています。

そして、風俗店と質屋が乱立し、自殺率は韓国ワースト1、タバコと酒も多くの人がたしなみ、施設内で自殺した人もそれなりの数に上るとされています。

利用者の6割はギャンブル依存症とされ、お金を借りるために質屋に並び、カジノで勝てば風俗へ向かう、一文無しになれば野宿をするという光景も見られます。

 

横浜がカンウォンランドになる可能性

横浜がカンウォンランドのように人口が減る可能性は考えにくい一方、横浜には曙町と呼ばれる風俗街があり、カジノで勝って風俗に向かう構図は成立しやすくなります。

カンウォンランドでは、地元住民の利用を月1回のみとし、それ以外の韓国国民に関しては月15回を上限にしています。

この上限を定めたのは、炭鉱で働いていた労働者がカンウォンランドに殺到し、退職金をどんどん使う人たちが多かったためです。

横浜市民は月1回の利用に限るなどの対策は講じられておらず、ギャンブル依存症を増やす原因になりかねず、注意が必要です。

 

カジノ法案成立でカジノに近い住民ほど、依存症になりやすい?

横浜市精神科医会や神奈川県精神科病院協会などは2019年12月に記者会見を行い、IR誘致に反対する理由について語りました。

この中で、「ギャンブルにアクセスしやすいほどギャンブル依存症の患者が増える」と紹介し、様々な事例や研究結果を紹介しています。

つまり、カジノに近い住民ほど、カジノにアクセスしやすく、それだけ依存症になりやすいことが考えられます。

パチンコパチスロでギャンブル依存症の患者が多いのは、近くにパチンコ屋があるためで、利用のしやすさが依存症にさせている可能性があります。

 

カジノ法案に関連した秋元司議員の逮捕

2019年12月、自民党の秋元司衆院議員が収賄の疑いで逮捕され、現在係争中です。

秋元司被告はIR担当副大臣を務めており、IR事業参入を巡り、中国企業から多額の現金を受け取ったとされています。

収賄容疑に関して秋元司被告は否認していますが、贈賄側に対して裁判での証言でウソをつくように求め、証人を買収しようとして逮捕されており、保釈を取り消されています。

衆院議員を買収して反社会的勢力がカジノ事業に参入する可能性も否定できないため、この問題は決して軽くないことが言えるでしょう。

 

カジノ法案は青少年への悪影響にもつながる?

横浜市民が熱心に署名活動を行い、IR設置反対を訴えるのはなんといっても、青少年への悪影響が懸念されるためです。

青少年への悪影響を防ぐための話し合いも国会などで議論されましたが、青少年への悪影響を防止する対策は少なく、未成年者がカジノ施設へ入場するのを禁止するというものだけです。

沖縄県では、青少年への悪影響に関する議論がなされ、パチンコ店への入場規制が弱いことやゲーム依存の子供が多いことなどを挙げ、青少年への悪影響を懸念する声が多いです。

未成年者の入場禁止だけでなく、オーストラリアのように小学校で依存症や賭博行為のリスクを取り上げて、教育していくことも1つのテーマになりそうです。

他にも広告の規制や本人確認書類の提出を必須とするなど、様々な対応が求められます。

 

まとめ

横浜ではカジノ法案が成立したことを受け、IR設置に反対する動きが強く、その是非を問う住民投票を行おうと、署名活動が展開されています。

横浜市民の不安は根強く、反社会的勢力やギャンブル依存症など強く不安に感じている点が見られ、その解決は難しそうです。

本来であれば住民への説明をより濃厚に行い、民意を問う必要があるのに、林文子市長は住民投票に反対し、議会の多数会派(自民党・公明党)も追随しました。

横浜にとってデメリットや悪影響が考えられる中、市長などがそこに目を向けないのは、横浜市民からすれば不安でしかありません。